「いや、あたしはついてこないでって言ったんだけど……」
「今日暑いし、駅前でアイス食べようよ」
「は?」
「美姫ちゃんが一緒にアイス食べてくれたら、おとなしく帰るよ?」
小首を傾げながらにこりと笑う仁織くん。
邪気のないきらきらした笑顔に押されてつい黙り込んでしまう。
「俺、奢るし」
あたしの反応を肯定と捉えたのか、仁織くんが笑顔でさらにもうひと押ししてくる。
「脅してるの……」
ため息まじりにつぶやくと、仁織くんがゆっくりと首を横に振った。
「全然。口説いてんの」
「……」
笑いながら、さらりとそんな言葉を返してくるから反応に困る。
この子は……
中学生のくせに、年上相手に口説いてるとか本気で言ってるんだろうか。
まぁ、冗談だったりからかわれたりしてるなら、なおさらタチが悪いけど。
同じ目線の高さでじっと仁織くんを見つめる。
すると彼がふざけたように笑いながら、左手を額のあたりに置くようにして顔を隠した。



