「みーきーちゃんっ」

校門を出ると、あたしの左サイドから仁織くんが勢いよく飛び出してきた。


「ひっ……!?」

想定外のできごとに驚きすぎて、声にならない悲鳴が漏れる。

目を剥きながらまわれ右して学校のほうに逃げ出そうとすると、仁織くんの手につかまった。


「美姫ちゃん、何か忘れもの?」

肩越しに振り返るあたしに、仁織くんがにこっと笑いかけてくる。

忘れものだって言ったら、この手を離してくれるのだろうか。

その隙に裏門から逃げ帰れば……

考えてみたけれど、それは一時的な回避に過ぎないような気がした。


「携帯番号教えたでしょ。そのかわりにもう待ち伏せはしないって約束したじゃない」

ため息をつきながら睨むと、仁織くんがちょっと考え込むように視線を上に向けながら小首を傾げた。

「そうだっけ?」

「そうよ!」

可愛いしぐさとともに大ボケをかましてくる仁織くんに、つい声を荒げてしまう。