「あ、美姫ちゃん」

けれど、すたすたと早足で通り過ぎようとするあたしを仁織くんが見逃してくれるはずはなく。

逃げるあたしを不思議そうな顔でトコトコ追いかけてくる。


「待ってよ。また偶然会えたらいいなと思って裏庭とか購買に行ってみたけど、全然会えないし。我慢できなくて会いに来ちゃった」

隣に並んだ仁織くんが笑いながら恥ずかしげもなくそんなことを言うから、あたしのほうが恥ずかしくなって赤くなる。

もう、本当に何なの。この子……

確実に赤くなっている頬を、伸ばした髪で隠すようにうつむいて彼の言葉を無視して歩く。


「美姫ちゃん電車だよね?駅まで一緒に帰ってもいい?」

だけど、隣に並んだ仁織くんはめげることなくあたしに話しかけてくる。

どうして一緒に帰らないといけないのよ。

周りには高等部の生徒がたくさん歩いてる。

あたしと並ぶ濃紺の学ラン姿の仁織くんは、いろんな意味で悪目立ちしていた。