Sweet Puppy Love



何なの、あの子……


遠くなっていく濃紺の学ランの後姿を、茫然と見つめる。


「もしかして、今のが噂の中学生?」

その場に立ち尽くしていると、いつの間にか隣に立っていたふーたんがにやにや笑いながら仁織くんの後ろ姿を目で追っていた。


「あぁ、うん。声かけてくれてありがとう」

「そのまま見ててもよかったんだけど、あんまり美姫が押されてるから気の毒になってきて」

そう言いながら、ふーたんが手に持っていた英語の参考書を一冊あたしに手渡してきた。

あたしが仁織くんに絡まれている間に、ひとりで見つけてくれたらしい。


「ありがとう」

「だけどさっきの中学生なかなかかわいい顔してたよね。見た目以上に結構強引だったけど」

参考書を持ってレジに向かおうとすると、ふーたんがあたしを見てにやりと笑った。


「そう?」

「うん、ジャノンボーイ系の爽やかイケメンじゃん」

仁織くんの顔を思い浮かべながら渋い表情浮かべると、ふーたんがふははっと笑った。