「でもさっきは、過去のことをどうこう言ってたら誰とも付き合えないとか。大人びたこと言ってたじゃない」
「それは、嫉妬して子どもっぽいって思われたくなかったから」
悔しそうにつぶやいて、仁織くんがあたしの額にキスを落とす。
「どうして?あたしも、嫉妬してもらえるのは嬉しいよ」
彼の頬を両手で包むと、拗ねたような目があたしを見つめ返してきた。
その目を見たら、仁織くんとの間に気持ちの温度差なんて存在しなかったんだとちゃんとわかった。
「あのね……」
話しかけると、仁織くんが不貞腐れた顔のまま、それでもちゃんと耳を傾けてくれる。
「あたしも、キス以上はまだしてない」
両腕を伸ばして仁織くんの首に絡ませ、耳元に顔を寄せると、彼が腕を振り回して悲鳴をあげた。
「あー、もう。美姫ちゃんっ!」
「何?」
顔を離して首を傾げると、仁織くんが手をかざして真っ赤になった顔を隠していた。
「これ以上煽るのやめてくれる?」
「あたし、何もしてないけど」



