振り向くと、あたしとだいたい同じくらいの身長の彼と、ちょうど同じ高さで目が合った。
腰を屈めて顔を覗き込まれるでもない限り、こんなふうに間近で男の子と目が合うなんて滅多にない。
真剣な顔をした彼のダーグブラウンの瞳が綺麗で、目に見えて真っ赤になってるんじゃないかと思うくらい頬が火照った。
どうしちゃったのよ、あたし。
何を弟たちと同じくらいの中学生に相手に照れてんの。
恥ずかしくなって、つかまれていた手を少し乱暴に振り払う。
「な、何言ってるのよ。あたし、あんたの名前も学年も知らないし。それに、昨日も言ったけどあたしには今のところ彼氏作る予定なんて――……」
「俺、真野 仁織(マノ ニシキ)。中等部の2年。ごめんね、名乗るの忘れるとか焦りすぎ」
冷たくあしらって逃げてしまおうと思ったのに、中学生……仁織くんは笑顔を崩さない。
「だから、あの……」
「あ、そうだ。美姫ちゃん番号教えて!」
戸惑うあたしをよそに、仁織くんが携帯を取り出してこちらに向けてくる。



