「美姫ちゃん……」
仁織くんが、心配そうにあたしの口元に手を伸ばしてくる。
その指先が唇に触れる前に、彼の手をつかまえる。
その手をきつく握りしめると、あたしはゆっくりと口を開いた。
「『他の誰かとはもう付き合わない』って。男の子と付き合うときはいつだってそう思ってきたよ。告白してきたのは向こうでも、あたしだってその人のことをちゃんと好きになって、真剣に向き合うつもりで。だから、付き合ってるときに、彼氏に他の女の子の影があると気になって嫉妬しちゃって。そうしたら、重いとかイメージと違うとか言って振られてきたの」
好きになってくれたのは、向こうが先なはずなのに。
気付けばいつも、それとあたしの気持ちには大きな温度差ができている。
「だから最近は、イメージ崩さないようにって、クールなフリして努力してたよ。だけどそうしたら今度は、冷めてるだとか、本当に俺のこと好きなのかとか言われて振られた」
あたしがどんなふうに努力しても、いつだって彼氏との気持ちの温度差は日を追うごとに広がっていくばかりで。
結局、「好きだ」と告白してくる男の子たちに求められてたのは本当のあたしや偽りのあたしの内面じゃなくて、人より少しだけ目立つ外面だけなんだって気が付いた。



