「高等部の校舎って、階段登ったり降りたりして回ってこないといけなくて面倒で。でも、美姫ちゃんに会えてラッキー」
彼が口角をきゅーっと引き上げて、白い歯をちらっと覗かせながら本当に嬉しそうに笑う。
軽く顔を傾けた彼の、ちょっとクセのある柔らかそうなダークブラウンの髪がふわりと揺れる。
中学生男子なんて弟たちで毎日散々見慣れてるはずなのに、彼の嬉しそうな顔に不意打ちを食らったみたいに一瞬ドキリとしてしまった。
「あぁ、そうなんだ」
一瞬の動揺がバレないように、さりげなく彼から視線をそらす。
「じゃあ、あたし用事あるから」
「あ、美姫ちゃん」
素っ気ない声でそう言ってふーたんのほうに行こうとすると、呼び止められた。
同時にあたしの手首をつかまえていた彼が、すっと隣に歩み寄ってくる。
「昨日の告白の返事、考えてくれた?」
人目を憚るようにあたりに視線を動かしてから、彼が声のトーンを落としてあたしの耳にささやく。



