「怒ってないの?」
恐々訊ねたあたしに、仁織くんはきょとんとした顔で数回瞬きを返した。
「何で怒るの?」
「何でって……」
不思議そうに問い返されて、言葉に詰まる。
「美姫ちゃんは正直な気持ちを伝えてくれただけでしょ?そりゃぁ、やっぱり、ちょっと……というかかなりヘコんだし。あの場ですぐに何でもないフリできなくて困らせちゃったけど。それが美姫ちゃんの気持ちだから、仕方ないとは思う」
仁織くんが頷きながら、淡々と言葉を紡ぐ。
仕方ない、と言われた瞬間、彼に拒絶されてしまったような気がして勝手に傷付いた。
先に傷付けたのはあたしで、彼にその言葉を言わせてしまったのもあたしなのに。
膝の上のアイスの袋を握りしめる。
溶け始めたアイスが、ぐにゃりと潰れる。
その感触が、袋越しに手のひらにリアルに伝わってきた。
あの日、あたしは取り返しのつかないようなひどいことを言った。
何もなかったみたいに笑いかけてきた仁織くんだけど、きっともう、あの日までと同じような気持ちではあたしのことを見てくれない。
うつむいて唇を噛む。
そのとき、隣から仁織くんのはっきりとした声が聞こえてきた。
「だけど、仕方ないから諦めようとはやっぱり思えないんだよね」



