「そのことじゃないよ」
どうして、なんでもなかったみたいに笑うんだろう。
あたしは、文化祭のあの日から仁織くんの傷付いた顔が四六時中脳裏を散らついて、離れなくて、仕方なかったのに。
今日の放課後だって、どんな顔をして会えばいいかわからなくて、裏門からこっそり逃げ出したのに。
「しばらくあたしの顔なんて見たくないんじゃないかと思ってたのに。どうして待ってたの?」
「顔見たくないわけないじゃん。むしろ、毎日でも会いたいけど」
仁織くんがアイスを囓りながら無邪気に笑うから、やけに胸が騒いで頭が混乱する。
「だけどあたし……文化祭の日、ひどいこと言ったじゃない。仁織くんの傷ついた顔見てから、すごく後悔した。だから、今日だってどんな顔して会えばいいかわからなくて。仁織くんが待ってるの知ってて、裏門から逃げ出したの」
「あー、だから駅のほうから学校に戻ってきたんだ」
仁織くんが、謎が解けたとでも言わんばかりに、すっきりした顔で頷く。



