「お待たせ」
声をかけると、不意を突かれて顔を上げた仁織くんが、戸惑い気味に視線を泳がせた。
「あれ?美姫ちゃん、どうして向こうから?」
校門の外から現れたあたしを見て、仁織くんが驚いたように瞬きをする。
「いーから。行くよ」
そんな彼の手首をつかむと、バス停のほうに足を進めた。
「美姫ちゃん、どこ行くの?」
年下でもやっぱり男の子な仁織くんのほうが力が強いから、立ち止まって抵抗するのは簡単だったはずだ。
だけど彼は、あたしに引っ張られるがままに後ろをついてくる。
「待たせたから、バス停までお詫びに送ってく」
仁織くんに背を向けたまま言うと、そこで初めて、彼があたしに抵抗するように立ち止まった。
急に立ち止まられたせいで、前に進もうとしていた身体が反動で後ろにぐんっと引っ張られる。
「それ、帰り道美姫ちゃんが危ないじゃん」
後ろによろめいたあたしの肩を、仁織くんが軽く受け止める。
同時に耳元で響いた声に、一瞬にして頬が火照るのがわかった。



