「そろそろ暗くなりかけてるのに、美姫のこと健気に待ってて。もう帰ったって教えてあげようか迷ったんだけど、なんか思い詰めてるみたいな表情してたから、結局声かけれなかったよ」
携帯を耳に押し当てたまま黙り込むと、ふーたんが優しい声で話しかけてきた。
「何があったのか知らないけど。とりあえず、連絡だけでもしてあげたら?」
「連絡……」
「うん。じゃないとあの子、朝まで校門前で待ち兼ねないって。忠犬だから」
ふははっと、ふーたんが冗談混じりに笑う。
「教えてくれてありがとう」
ふーたんからの電話を切ると、もう空っぽになったアイスティーのカップを持って立ち上がった。
カップをゴミ箱に乱暴に突っ込むと、早足でカフェ内の通路をすり抜けて店を飛び出す。
そこからは、学校まで全力で走った。
息を切らしながら、それでも立ち止まらずに走り続けたあたしの視界の先に、学校の校門が見えてくる。
その端に、うつむいて立つ仁織くんの姿を見つけた瞬間、きつく押しつぶされるみたいに胸が痛くなった。



