「あ、美姫ちゃんだ!」
ふーたんから少し離れたところで携帯を弄っていると、後ろからトンッと肩を叩かれた。
「偶然だねー」
振り返ると見覚えのある中等部の男の子が立っていて、携帯を片手にフリーズしてしまう。
あたしに向かって満面の笑みを浮かべているのは、昨日「彼氏立候補」宣言をしてきた中学生だった。
「美姫ちゃん、何してるの?」
昨日少し言葉を交わしただけなのに、中学生の彼はまるで数年来の友達みたいに親しげに話しかけてくる。
その距離感覚の近さに、あたしは一歩引いてしまった。
「何って。ここ、高等部の校舎なんだけど……」
答えにならない答えを返したあたしに、彼は笑いかけ続けてくる。
「そっか、そうだよねー。俺は、体操着が小さくなってきたから新しいの買いに来たとこ。購買は高等部にしかないから、用事があるときは俺らもこっちの校舎来ないと行けなくて」
聞いてもいないのに、中学生がわざわざそんな説明をしてくれる。



