仁織くんは、どうしてひどいことを言ったあたしなんかにまた会いに来てくれたんだろう。
会いに行って謝らないといけないのはあたしの方なのに。
仁織くんに謝りたい。
だけどあたしにはまだ、傷付けた彼に向き合う勇気がない。
だから、今日はせっかく来てくれた仁織くんに気付かないフリをして逃げ出したかった。
「ごめん。ふーたん、やっぱり今日は裏門から帰る」
「そっか」
そう言い張るあたしを、ふーたんはもう引き止めたりはしなかった。
「気をつけてねー」
ふーたんがあたしに手を振ってにっこり笑う。
「うん、部活頑張って」
あたしもふーたんに手を振り返す。
そのあとは、裏門に向かって、脇目もふらずに一直線に走った。