中等部の文化祭が終わったあとの、週明けの火曜日。
校舎を出た瞬間、あたしの足がぴたりと止まった。
「あ、今日も来てるよ。愛されてるねー」
校門の前に仁織くんの姿を見つけたふーたんがふははっと笑う。
「そういえば全然話してくれなかったけど、土曜日の文化祭はどうだったの?」
話しながら歩いていたふーたんが、そこで初めて、あたしが校舎の前で立ち止まっていることに気がついた。
「美姫?どうかした?」
ふーたんが、あたしを不思議そうに振り返る。
「いや、別に……」
「帰らないの?」
いつまでも立ち止まったまま動き出そうとしないあたしを、ふーたんが怪訝そうに見つめる。
「帰るよ。だけど、ちょっと用事思い出しちゃった。今日は裏門から帰るね。ふーたん、部活頑張って」
じゃぁ、と片手をあげると、校門に背を向ける。
「どうしたの、美姫。ジャノンボーイ来てるのに、今日は一緒に帰らないんだ?」
「だから、用事を思い出したんだよ」
「何か美姫、変じゃない?ジャノンボーイとケンカでもした?」
そそくさと立ち去ろうとするあたしの肩を、ふーたんががっしりとつかまえる。