仁織くんが、あんまり上手にあたしの心に近づいてきたから。
だから、うっかり油断した。
いつの間にか振り回されて、すっかり心を動かされてしまいそうになっていたけれど……
あたしは、彼女がいる人の浮気相手にはなりたくない。
「仁織くん、文化祭はちゃんと彼女と回りなよ。きっと待ってるよ?」
突き放すように、冷たい口調でそう言うと、仁織くんがきょとんとした顔で首を傾げた。
「え、何の話?俺、彼女なんていないよ」
不思議そうにあたしを見つめる仁織くんの目は、嘘をついているようには見えない。
「それに、俺が今、彼女になってほしいって思うのは美姫ちゃんだけだし」
真顔ではっきりと言われて、ドクンと胸が高鳴った。
何よ、それ。
この状況でそんなこと言うなんて、反則だ。
冷たく突き放したつもりなのに、鼓動がどんどん速くなって、頬が熱くなるのを制御できない。
仁織くんが嘘をつくような子じゃないっていうのはよくわかってる。
わかってるから、彼の告白を疑えなくなる。



