「あ、美姫ちゃんここにいたんだ。裏庭行ったらいないし、携帯かけたけど出ないから探したんだけど」
どれくらいぼんやりしてたのかわからない。
動く気力が全く湧かなくてその場に立ち尽くしていると、黒の甚平姿の仁織くんがにこにこしながら駆け寄ってきた。
店番のときにつけてたハチマキは外してるけど、今日のおまつりスタイルは仁織くんによく似合ってる。
相変わらず、笑った顔が可愛いなとぼんやり思う。
だけど、そばで笑っているはずの仁織くんとの距離がさっきまでよりもやけに遠く感じた。
今日の格好の仁織くんと浴衣着て、おまつりデートできたら楽しいだろうな。
でも、仁織くんは周りの目を引くから、一緒に歩いてたら誰かに取られちゃわないか気が気じゃないかもしれない。
さっきの彼女も、そうなのかな。
あたしみたいなのがうろちょろして、きっと気が気じゃなかったよね。
こうやって見てると、まだときどき幼さの残る表情を浮かべる仁織くんの横は、さっきの中学生の可愛い彼女が合ってる気がする。



