戸惑い気味に視線を泳がすあたしを、仁織くんが優しい表情でじっと見つめ返してくる。
その顔を正面からまともに見続けることができなくて足元に視線を落とす。
そのとき、あたしはあることに気が付いた。
仁織くんは、あたしが立っている階段の一段下に立っている。
顔を上げると、彼の目線はやっぱりあたしとほとんど同じ高さだった。
「仁織くん、背、伸びた?」
あたしの問いかけに、仁織くんがきょとんとした顔で首を傾げる。
「育ち盛りだからね」
仁織くんがけらりと笑ったとき、彼の携帯の着信音が大きな音をたてて鳴り出した。
かけてきた相手を確認した彼が、「げっ」と小さくつぶやいて顔をひきつらせる。
「やばい、燿だ……」
「早く戻らないと」
あたしが心配して急かすと、仁織くんは今度は素直に頷いた。
「美姫ちゃん、あとで迎えに行くね」
あたしから離れて階段を降りた仁織くんが、途中で振り返って笑う。
その笑顔を見送るあたしの心に芽生えた気持ち。
それにしっくりくる言葉は何かと問われたら。
それは間違いなく、「愛おしい」だ。



