クセのある髪をふわりと揺らしながら、仁織くんがにこりと笑う。
その笑顔に若干心を躍らせながら、無言で首を縦に振ってしまうあたしは、もう完全に彼に落されてるんだと思う。
「お店忙しそうだったのに、いつまでもここにいて大丈夫?」
焼きそばの入ったプラスチックパックを受け取りながら訊ねると、仁織くんが気まずそうに頬を引きつらせた。
「いや。黙って燿にコテ押し付けて飛び出してきたから、戻ったらめっちゃキレられる」
「そうなの?じゃぁ、早く戻らないと……」
本気で心配したのに、あたしの言葉を聞いた瞬間仁織くんがふてくされたように唇を尖らせた。
「必死で追いかけてきたのに。そんなあっさり追い返さないでよ」
「だって、黙って出て来たんでしょ?」
「そうだけど……焼きそばより、こっちのほうが断然大事」
仁織くんの手のひらが、焼きそばのパックを持っていないほうの手の指先をギュッと包む。
同時に、あたしの胸もギュッと締め付けられたみたいに甘い痛みで苦しくなった。



