Sweet Puppy Love





「美姫ちゃん!」

焼きそば屋さんの教室を離れて、上のフロアに向かう階段を駆け上がっていると、後ろから腕をつかまれた。

名前を呼ぶ声で、そこにいるのが誰だかわかってしまい、反射的に足が止まる。

そっと振り返ると、思ったとおり、そこには仁織くんが立っていた。


「美姫ちゃん、せっかく来てくれたのに、どうして買わずに行っちゃうの?」

困った顔をしてそう訊ねてくる仁織くんの、息が少し乱れている。


仁織くん、今店番中のはずだよね。

すごい忙しそうだったから、仁織くんが抜けたりしたら他の店番メンバーがきっと困ってる。

それに、仁織くん目当てで列に並んでた女の子たちもたくさんいたはずだ。

それなのに、わざわざあたしのことを追いかけてきてくれたの……?


「ごめん。ちょっと覗いたらすごく忙しそうだったから、またあとで来てみようかなーなんて思って」

「そうなんだ?美姫ちゃん、急に走っていなくなったから何かあったのかと思った」

そんなふうに言い訳したら、仁織くんがほっとしたように表情を和らげた。