「ねぇ、燿くん。あたしのとこまで足りるー?」
「んー、足りるように今調整中。とりあえず待ってて」
グレーの甚平の男の子が、八重歯を覗かせながら話しかけてきた女子ににこっと笑いかける。
あの子が燿くんなんだ。
噂されるだけあって、綺麗な顔のかっこいい子だ。
あれ、でもなんか見たことある……?
そう思いながら、焼きそば屋の列に近づいて燿くんの顔を盗み見る。
それで、あっと思った。
この子、仁織くんに初めて会ったときに彼を呼びに来た子だ。
そのあと、仁織くんに校門で待ち伏せされてたときにもちらっと顔を見てる。
教室に戻って行く燿くんの姿を目で追って、その奥の焼きそば屋の様子をそっと廊下から覗き見る。
ちょうど黒板の前あたりに、お祭りの屋台に似せたお店が作られていて、そこで甚平や浴衣姿の生徒たちが忙しそうに動き回っていた。
その中心あたりに、白のハチマキを巻いた仁織くんが立っている。
黒の甚平の袖を肩まで捲り上げて、両手にコテを握った仁織くんの姿は、探すまでもなくすぐに見つかった。



