高等部もそうだけど、うちの中等部も校舎内が広い。
普通の教室以外に、何とか準備室とか、第何視聴覚室とか、多目的室とか。
やたらと部屋がたくさんある。
パンフレットの地図を見ながら廊下を歩いていると、突然後ろからトンと誰かが肩にぶつかってきた。
反射的に振り返ると、中等部の制服を着た女子生徒が僅かに眉根を寄せた。
「あ、すみません」
あたしに向かって小さく頭をさげると、彼女はすぐに一緒に友達ふたりに視線を移す。
それから、何事もなかったかのように友達と話し始めた。
「ねぇねぇ。今、C組の友達から連絡きたんだけど。今、仁織くんと燿くんが店番してるんだって」
「え、そうなんだ?」
少し前を歩き出した彼女の口から、知った名前が聞こえてきてドキッとした。
「店番のとき、男子は甚平なんでしょ。ふたり、絶対似合うよね」
「だよね。絶対行かないと」
「急いだほうがいいって。仁織くんと燿くんが店に立ってから、お客さん急に増えたみたいだよ」
「そうなんだ?急ごうよ。売り切れたらショック!」
その言葉を合図に、彼女たちが揃ってパタパタと走り出す。



