春の扉 ~この手を離すとき~


自分の部屋に戻ってもテスト勉強をする気が起こらない。

あの人が突然来たせいで、リズムが崩されたというか。
でも成績が下がればまたやって来て、うるさいだろうし。

優等生を続けている苦労もたまにはほめてほしい。

まぁ、あの人にそんなことを期待するだけ無駄なのは、とっくの昔にわかっているけれど。


とりあえず机に向かうと、置いていたスマホが通知を知らせる点滅ライトを光らせている。


健太郎くんからのメッセージだった。



――さっきはごめん。智香にすっげー説教された ww


届いていたのはついさっき。
すぐに返事をすると『待っていました』って思われても嫌だし。
なんて思ってしまう。


わざとじらす

とか、そんなかけひきとは違う。
変に期待させたくないだけ。


こんなので本当に付き合ってるっていうのかな。
付き合い始めなんて、ずっとドキドキしていたり、連絡を待っているものじゃないの?