助手席から降りてきたのは先生と同じぐらいの年齢だけれど、わたしが見た目だけを気にして作った“大人”とは違う、大人びた綺麗な女性だった。


……だれ?


って考えても分かるはずもない。

わたしは先生のことを何にも知らない。
どんな友達がいるとか家族構成とか、どんな学生時代を過ごしてきたとか……。


わたしは学校での咲久也先生しか知らない。


先生とその女性は何かを話しているみたいだけれど、ここからは聞こえなかった。


たまたま出会って、寒いからクルマの中で話をしていただけなのかもしれない。
きっと健太郎くんが早とちりしただけだよね。

なんて、先生を信じたいし自分を納得させたくて、都合のいい理由を作ってみたけれど。