春の扉 ~この手を離すとき~


そのせいで教室では、健太郎くんと部活に行かせたい智香が何度も言い合いになっていたし、その度にわたしは智香ににらまれてしまっていた。

今では智香とわたしが完全にぎくしゃくとしている関係になり、『健太郎くんと別れたいから協力して』と頼めるような状況ではなくなっていた。

さすがに変な空気に気がついた文乃が心配してくれているけれど、ケンカの仲直りみたいな、そう簡単な話じゃない。


それにあれから健太郎くんには、何度も別れを切り出そうとしたけれど。
それに気づいた健太郎くんに無理に話をそらされていた。

一緒にいればいるほどお互いがつらいだけなような気がするのに。



「美桜、大丈夫? なんだか今日は少しおとなしくない? 」

「うん、ちょっと風邪っぽいの。でも食欲あるし平気だよ」

「でもなんか熱っぽいよ? 」


文乃がわたしのおでこに手をあてて熱を確めてきた。
わたしはごまかすために笑ったけれど、少し熱があがったような気がする。