抵抗することなくじっと黙り込んでいる。


ザーッと降りしきる雨の中、菜都の体温を感じていた。


ドキンドキンと高鳴る鼓動は、菜都にも聞こえてんのか?


だとしたら、恥ずかしすぎるだろ。


「矢沢君はズルい……っ」


「何がだよ……?」


「なんでもないっ。だけど……ズルいよっ」


「…………」


いやいや、いきなりわけのわかんねーことを言うお前の方がズルいだろ。


「ズルい……ホントは……あたしだって……っ」


涙交じりの悲痛な声に、胸の奥が締め付けられる。


「あたしだって……っ」


「……なんだよ?言えよ」


なんかあるんだろ?


俺に言いたいことが。


いつも何か言いたそうに俺を見てること、ちゃんと知ってんだよ。


悲しそうに寂しそうにしてること、ちゃんと気付いてんだよ。


言えよ、ちゃんと。


聞かせろよ、お前の本音。


知りたいんだって、マジで。