「ドキドキ……するから、離して」


ドキドキするって……なんでだよ。


俺のことを好きでもねーくせに。


意味わかんねーよ。


なんで期待させるようなことばっか言うんだよ。


俺のこと……どう思ってんだよ。


密着していると、答えが知りたくてたまらなくなる。


菜都の本音が聞きたい。


どうしても問い詰めたくなる。


困らせたくなる。


「菜都……」


抱き締める腕にさらに力を込めた。


誰が離してやるかよ。


もっとドキドキさせてやる。


忘れられなくさせてやる。


俺じゃなきゃ嫌だって言わせてやる。


「は、離して……矢沢君」


「ムリ」


「お願い……」


「マジで好きなんだよ」


お前が俺をどう思っていようと、好きでたまらねーんだよ。


振られてんのにしつこいって思われるかもしんねーけど、そう簡単に諦められる気持ちじゃない。


「だから、離したくねー」


「……っ」


菜都はそれ以上何も言わなかった。