死ぬ……。


死……。


いや……待て待て。


そんなわけないじゃん。


とりあえず、ちょっと冷静になろう。


まず、ホントにあたしの中に脳腫瘍なんてあるの?


ちょっと頭痛はするけど、こんなに元気なんだよ?


あ、ほら、あれだ。


その画像は誰か別の人のもので、まちがって表示しているだけなんじゃないの……?


あたしのものじゃないんだよ、きっと。


ねぇ……そうだよね?



「このまま進行していくと徐々に歩けなくなったり、呼吸が出来なくなって意識を失ってしまいます。余命は長くて1年……短くて数ヶ月。今アメリカで脳腫瘍に関しての研究が再び見直されていますが、やはり脳幹部は複雑な場所なのでまだまだ完治は難しいかと。でもーー」


「ウ、ウソだ……そんなこと、あるわけないよ」



だって、実際にあたしは呼吸が出来てるもん。


意識だってちゃんとある。


死ぬなんて考えられない。


背筋が凍りつくほどの衝撃に耐え切れなくて、思わず先生から視線をそらした。


これ以上、そんな話は聞きたくない。


聞きたく……ない!



「……っ先生のウソつき!」



あたしは死なない。


死ぬわけない!


変なこと言わないでよ。



「こ、こら……菜都!どこに行くんだ?」



お父さんのそんな声が聞こえたのを最後に、診察室を飛び出した。