こんなひと気がない場所を、誰かが通るとも考えられないし。


「サララちゃん……はぁはぁ」


「あ、あたしは……サララちゃんじゃない」


「なに言ってるの?どっからどう見ても、サララちゃんじゃないか」


真顔でそんなことを言うこの人は絶対におかしい。


正気の沙汰じゃないよ。


あたしとアニメの中のキャラを重ねるなんて!


「サララちゃん……!」


鼻息を荒くしながら、勢いよく襲いかかってくる。


「い、いやっ」


怖くてその場にうずくまった。


頭を抱えて小さく丸まる。


怖い!


誰か助けて……!!



「何やってんだよっ!」


ーードカッ


「うっ」


誰かの声とドサッと何かが倒れる音がした。


怖くてたまらなかったけど、恐る恐る顔を上げてちらっと様子をうかがう。


え……?


な、なんで?


あたしの目の前には、なぜか前のめりに倒れ込む男子の姿があった。


そして、その向こうに立ちはだかるのはーー。


「ななな、なにするんだよ……!」


「うっせー。お前が悪いんだろっ!何しようとしたんだよ!?あ?」


怯えきった表情を見せる男子に対して、ダークなオーラを放ちながら強気に睨み返す矢沢君。