「浩志、なんでこんなところにいるの?」


そう聞きながらあたしの目の前までやってくる奏。


「いや、別に……」


ごにょごにょとそう言い、視線を泳がせる。


「偶然通りかかっただけ?」


「そ、そんなところ」


「あっそ。あたし今から約束があるから」


そう言い、奏は急いでいる風を装う。


しかし歩き出そうとはしない。


あたしに何かを言ってほしいというような雰囲気が伝わって来た。


「どこに行くの?」


「どこでもいいじゃん」


そっけなくそう返事をする奏。


「もしかして、あの男に呼び出された?」


あたしが聞くと、奏がゆっくりとこちらへ視線を向けた。


その目は『助けて』と言っているように見えて、あたしの胸はグッと強く掴まれた。


「関係ないじゃん」


関係ない?


それならどうしていつまでもここにいるのよ。