「へぇ、良い事聞いた。あんた毎月この日に塾の月謝を払いに行くんだ?」


ニヤリと笑ってそう言った奏に、ミカちゃんは一瞬にして青ざめた。


「じゃあ、来月もよろしくね」


ニコッと笑ってカナちゃんの肩に手を置く奏。


カナちゃんは青ざめたままうつむいている。


ここで反論すれば、奏は手を出して来る。


ミカちゃんもそれを知っているから言い返せないのだ。


あたしはグッと拳を握りしめた。


自分の姿とミカちゃんの姿がダブって見えて、足が自然と階段を上がって行っていた。


足音が聞こえて奏がハッと顔をこちらへ向ける。


浩志だと理解した瞬間、表情が緩んだ。


「なんだあんた、そこにいたの?」


奏は見下したような口調でそう言って来た。


「あぁ」


「盗み聞き? 趣味悪いよ?」


奏は自分が悪い事をしたという自覚がないようで、封筒をヒラヒラさせている。


「それさ、返してあげれば?」


踊り場までやってきて、そう言った。


ミカちゃんは驚いた様子であたしを見ている。


「はぁ?」


奏はあたしを睨み付けて来た。


その目で何度も睨まれてきた事を思い出す。