ただ、浩志の両親だってなんの利益もないままに手を貸すとは思えない。


浩志の両親が学校に手を貸す理由はただ1つ。


浩志がこの学校の生徒だからだろう。


両親が学校側に手を貸す代わりに、浩志はなにかを得ているはずだ。


例えば内申書。


例えば成績。


色んな部分で優遇されている可能性はあった。


あたしは大きく息を吐き出してお弁当箱の蓋を閉めた。


浩志は必死で穂月や司に縋り付いているように見えたけれど、実際はそんな事する必要なんてないのかもしれない。


浩志にとってイジメに加担することは、ただの暇つぶしなのかもしれない。


ただの憶測だったが、少し引いた場所からイジメに加担している浩志の立場は言い訳も通用する立場だった。


もし誰かにイジメていた人物として指摘されても、浩志や天真なら『イジメを強要させられていた』と説明すれば通るだろう。


一番タチが悪い。


「なんだよ、もう食わないのか?」


お弁当箱に蓋をしてしまったあたしを見て天真がそう聞いて来た。


「食っていいよ」


あたしはそう言うとお弁当箱を天真に差し出し、1人で教室を出たのだった。