あたしは今までの楽しかった時間が音を立てて崩れていくのを感じていた。


「そんな……そんな大金、持ってない……」


今日はカラオケにも行ったし、ファミレスでも支払いをした。


残っているのは千円札が数枚だけだ。


「はぁ? なに言ってんの? 『あたしには都合のいいおサイフちゃんがいるから大丈夫だ』って言ったのお前だろうが」


明さんが巻き舌を使って威嚇するようにそう言った。


その言葉に心臓がギュッと締め付けられる。


奏が言っていた『おサイフちゃん』とは、きっとあたしの事だ。


あたしやミカちゃんから奪ったお金は明さんにつぎ込まれていたらしい。


「でも……今日は持ってなくて……」


そう言うと、明さんはチッと舌打ちをして手をひっこめた。


「次に会う時は今日の分まで必ず持って来いよ」


明さんはそう言うと、背中を向けて行ってしまったのだった。