奏に用事があるから、司が直接話をすればいい。


それなのに夏斗を使うなんて、一体何を企んでいるんだろうか。


考えただけでも胸の奥が重たくなっていく感覚がした。


「奏、司が呼んでる」


あたしは仕方なくて奏に声をかけていた。


スマホでゲームをしていた奏はその言葉にあからさまに嫌そうな顔を浮かべた。


「なんで夏斗があたしにそんな事言うの?」


「わからない。でも俺は奏を連れて来いって言われてる。つまり、俺たち2人に用事があるんじゃないか?」


そう言うと奏は渋々ゲームをやめてスマホをポケットに入れた。


「嫌な予感しかしない」


そう言いながら2人で教室を出ると司と穂月が廊下の端に立っていた。


司と穂月の周辺に他の生徒の姿はない。


みんな意識的に2人を避けているからだ。


「なにか用事?」


少しだるそうな声でそう聞く奏。


「奏、あんたって実はかなり成績優秀でしょ?」


突然穂月にそう言われて奏は視線を空中に泳がせた。


返事ができないままその場に立ち尽くす。


事実なのかもしれないが、隠すような事でもない。