「何言ってるの? イツキちゃんのお母さんに持っててって言われたんでしょ!?」


夏斗の母親が怒った口調でそう言った。


「え、あたしのお母さんが?」


思わずそう言い、慌てて口をつぐんだ。


「あんた、イツキちゃんが事故に遭ったって聞いてすぐにイツキちゃんの家に飛んで行ったのを忘れたの?」


「そう……だったっけ……」


憶えているはずがない。


だってあたしは夏斗じゃないんだもん。


母親は呆れた顔を浮かべてあたしを見ている。


「イツキちゃんは事故なんかじゃなかったって、あんた泣いて帰って来たじゃない」


小さな声でそう言われて、体がビクリと跳ねた。


夏斗はあたしが自殺をしたことを知っていたんだ!


「その時にこれを持ってたのよ? クラスの優しい子に持っていてもらえれば、きっとイツキは目が覚める。そう言われたんでしょ? あんたはイツキちゃんを助けたいんでしょ?」


そうだったんだ……。


あたしは手の中のストラップをギュッと握りしめたのだった。