体のアザがそれを物語っている。


だとすれば神崎さんからのセクハラはエスカレートしているんじゃないだろうか。


「お母さん、見てほしいものがあるの」


あたしはそう言い、母親の手を取ってユメノの部屋へと向かった。


自分ではわからなくても、ユメノの体を見てもらえばきっと理解してもらえる。


もし大変なことになっているなら、病院で検査を受ける必要も出てくる。


あたしは勇気を出して母親の前で服を脱いだ。


ユメノの綺麗な体が露わになった瞬間、母親の息を飲む音が聞こえて来た。


あちこちにできているアザを見た瞬間表情が歪む。


「ごめん。ごめんね、今まで言えなくて」


ひどく悪いことをしているような気がして、あたしはつい謝っていた。


母親は左右に首を振り「なんでユメノが謝る必要があるの」と、涙声で言った。


そして青アザを何度も何度も撫でる。


そうすれば傷が消えるかのように、優しく丁寧に。


「今までなにも気づけなくてごめんね。ユメノの嘘はいつも見抜いていたつもりだったのに……」


母親の声が大きく震える。


ユメノは両親に悟られないために、演技力を駆使していたのだろう。


そう思うと、胸が締め上げられているような気持ちになった。


ユメノの演技はこんなことのために使われてはいけない。


沢山の人の前で演技をしたり、テレビの中で役柄になりきるためにあるものだ。


「病院へ、行きましょう」


母親の言葉に、あたしは頷いたのだった。