姉は今吹いた柔らかく冷たい風の行方を目でおった。
「あの頃…」

 姉はそう呟いてから、力なく地面にぺたんと座った。
 「あの頃は、出ていくしかなかったの。自由になりたかったのよ…意味もわからずに、ただ自由になりたかった。平凡な人生になる事に、不自然なくらい怯えてた。」
 そして姉はゆっくりと、その軌跡の足跡を辿るように話しはじめた。