姉の選んだ道は、私が想像していた以上に雑念とした場所だった。
 孤独が常につきまとう。
 だからみんな必死で仲間を作る。
 姉だって、必死だったはずだ。

 「帰りたい、って思った事ないの?」
 私は言った。ずっと引っ掛かっていたのだ。今はもう実家に身を戻していても、彼女はそれで幸せなのだろうか…。

 姉はしばらくセーラムを一本取り出して弄んでいた。

 「帰らなきゃ、とは思ってた。
帰らなきゃ、帰らなきゃ、あの窮屈で不自由な場所へ。優しくてむせ返るような愛情に包まれた、あの人達のところへ。
時々、呪文みたいにそう唱えてた。」