危険地帯




鈴子さんと麻妃ちゃんの幸せそうな笑顔も、お父さんからの再婚の話も、さっきまで感じていた孤独感も。


全て取り払うように、吐き出すように、全速力で走った。


マンションの六階にある私の家から、一歩また一歩と遠ざかっていく。



空っぽな胸に閉じ込めた本当の気持ちが、地に足がつく度、どこかへと消えていく気がした。




『――あんたなんて、』




脳内を駆け巡る、幼い頃の記憶の残像。


忘れてしまいたい言葉。


知ってしまった、残酷な現実。


ダメだ。これ以上思い出してしまったら、何もかも信じられなくなってしまう。




『大丈夫♪』




瞬間、じわじわとこみ上げてくる涙をすくい取るような、アイツの声が脳に響いた。


その声で、我に返る。



そう、大丈夫。大丈夫だ。きっと、大丈夫。


だって私は、決して独りじゃない。