危険地帯




誰かを傷つけてまで、自分を傷つけてまで、喧嘩をする意味はあるの?


どうして、喧嘩をするの?


痛い思いをするだけなのに。



瞬間、ある記憶が脳裏を過ぎった。



昔から、苦しさしか残らない喧嘩なんて、大嫌いだった。


喧嘩は、大切なものを壊していく。


私は、昔からずっとこうやって耳を塞いで、うずくまっていた。




『――あんたなんて、』




その続きを思い出してしまう前に、



「まだまだこれからなんだから、へばってんじゃねぇよ」



耳を塞いでいる指の隙間を通って、深月の声が聞こえてきた。


立っているのでやっとの状態の不良の胸ぐらを片手で掴んだ深月が、もう片方の腕を振り上げる。


喧嘩を楽しんでいるその姿に、私は恐怖を抱いた。



現実でも、記憶にも、私は怖がっている。


自分でも、情けないと感じるくらい。