ふと、司と目が合う。
司が私の気持ちに気づいたみたいに、穏やかに笑った。
よかったな、と言っているかのような、大人びた笑顔だった。
「うん、よかった」
私は小さく頷いて、呟いた。
律と千歳の騒がしい声を聞いていると、深月の抱きしめる力が緩まった。
ゼロセンチだった深月との距離が、少しだけ離れる。
「――なあ、誓えよ」
深月は私を見つめながら、そう言うと口角を上げた。
脳裏を過ぎった、私と黒龍が出会ったあの日。
『誓えよ』
あの頃とは、全く違う。
『その条件を満たすまで、俺達から決して逃げないことを』
恐怖も禍々しさも悲しみもない。
夢も幻も過去も過ぎ去った、“今”を見つめよう。



