私のことを何も知らないから、お父さんは私に怒ることも叱ることもできなかったんだ。
なんでもっと早く、こんな大事なことに気づけなかったんだろう。
そうしたら、こんなに遠回りしなくてもよかったのに。
「あのね、私……」
本音を吐き出そうとした瞬間、玄関の扉が開いた音が聞こえてきた。
足音が、リビングに近づいてくる。
「羽留ちゃんが見つかったって、本当……!?」
リビングにやって来たのは、新しい母親の鈴子さんと、義理の妹の麻妃ちゃんだった。
「さっき連絡したんだ」
戸惑っている私に、お父さんがそう教えてくれた。
鈴子さんは私の目の前に来て、
――パンッ!
私の頬を、ビンタした。
私は突然のことに、数秒動けなかった。
頬がヒリヒリと痛みだして、ハッとする。



