危険地帯




私を呼んだ声の主が、頭に浮かぶ。


ありえない。


そんなわけない。


そう、思うのに。


期待せずにはいられなくなって、頭に浮かぶ姿を消せなくて。



「羽留!!」



また名前を呼ばれて、私は無意識に声がした方へと顔を向けていた。


視界に映った人の姿に、心拍数が高まる。




「お、お父さん……!」




私を呼んだのは、博さんのカフェから出てきたお父さんだった。


どうして、こんなところにいるの?


仕事は?


なんで私を呼んだの?



私のことなんて、どうでもいいくせに。