皆の心に潜んでいた優しさが、殻を破って、“黒龍”を変えたんだ。
どうしよう、泣いてしまいそうだ。
嬉しくて、嬉しくて。
皆の想いが、私を温かくしていく。
「で、でも、喧嘩は……」
「俺らはずっと、意味のない喧嘩をしていた」
なおさら、私を助けるためだけに、誰かを傷つけてほしくない。
そう思っていた私の言葉を遮って、深月はゆっくりと立ち上がりながら、呟くように言った。
「でも、気づいたんだ」
私を見つめる深月の眼差しが、私を捕まえる。
瞬間、倉庫を漂う冷たい殺気が、和らいだ。
「拳を交わして、分かり合えるって」
「え……?」
「傷を負うだけじゃねぇんだって」



