私は「よし!」と覚悟を決めて、深月達が起きないように、物音ひとつ立てずに寝室を出た。
私一人でなんとかできるなら、そうしたい。
きっと、大丈夫だ。
階段を上がると、廃ビルの前で私を待っている忍者の背中を見つけた。
私の足音で、忍者が振り向く。
「お、言うことがちゃんと聞けて、偉い!」
私を子供扱いした忍者は、含み笑いする。
私は慎重に、忍者に近づいていく。
「どうして私を呼んだんですか?」
「君を利用するためさ」
「え……?」
すると、忍者は私の口元にハンカチを当てた。
なに!?
ザワ、とカサついた風が吹いた。
「これは催眠薬を含ませたものだ。しばらく、眠っていてくれ」
強制的に遠ざけられていく意識の中、最後に聞こえてきたのは忍者の、感情のない声だった。



