黒龍のたまり場から出ると、蝉の鳴き声が聞こえてきた。


星が瞬く藍色の空に目もくれず、俺達は走り出す。


行く先はもちろん、十番の倉庫。



以前に神雷と闘った、危ない香りが漂う場所。



繁華街の、俺には似合わないネオンの光を避けて、薄暗い路地を通る。


路地を抜けると、街灯も人気もない、大通りに出た。


そこで、思いもよらない奴らと出くわした。



「お前ら、どうしてここに……!」


「情報を掴んだんだ。とある売人がある場所に現れるという情報をな」


「……へぇ、さすがだな」



俺達には掴めなかった、とある売人の情報。


それを手にした奴らは、どうやら俺達と同じ目的で、同じ場所を目指しているようだ。




「お前らに、頼みがある」




俺は奴らに、あることを頼んだ。


本当は頼みたくねぇし、こんなことを頼めるような人間でもねぇ。


でも、今は緊急事態だ。



闘いに勝つためなら、どんなことだってする。