危険地帯





『羽留、いい加減にしなさい!』


『……ふぇ、うわああん』



お母さんの怒鳴り声に、私は泣き出す。


それでも、抵抗を続けた。


わがままを押し通そうとした。



私は、愚かだった。


この世界は、幸せばかりでできていると、信じていたのだから。


そんなわけ、ないのに。



『お母さんなんか大嫌い』



心にもない言葉を言い放った私は、お母さんを思い切り押した。


瞬間、――パリンッ、とまだ食べ終えていないおかずが入った食器が、割れた。



『っ、い、いやあああ!!』



お母さんの甲高い悲鳴が、耳を突き刺した。


暴れていた私は、お母さんを見て、ようやく動きを止めて静まった。