危険地帯





脳裏を流れる、辛い記憶。


バイオリンの音と、食器が床に落ちて割れる音。


そして、お母さんの悲鳴と罵声。



『――あんたなんて、』



ごめんなさい、ごめんなさい。


何度謝っても、許してもらえないだろうけど。


それでも、私は、残酷な現実を信じたくなかった。





目を開けると、深月と律と司の顔が視界に映る。


ここは、黒龍のたまり場?


地下の寝室にある、5人分(総長、副総長、幹部3名用)のベットの内の1つに、私は横になっていた。



「あ、羽留!」


「大丈夫か?」



律と司は、私が目を覚ましたことにホッと息をつく。


私が上半身を起こそうとすると、深月は黙って私の背中に手を添えて、起こすのを手伝ってくれた。