声色まで、嘘をつかなくていいんだよ。


平気そうにしなくていいんだよ。



過去を聞いて、気づいたことがあるの。



ねぇ、深月。


本当はずっと、誰かを信じたかったんでしょ?


けれど、また裏切られるのが怖くて、無意識にブレーキを踏んでいた。



「話してくれて、ありがとう」



涙が浮かんでいた目を拭って、背筋を伸ばして、笑顔を見せて。


辛い過去を話してくれた深月の覚悟をたたえる。



深月の“昔話”。


それはあくまで過去で、今じゃない。


私が知っているのは、“今”の深月だけ。



だからこそ、伝えられることがある。



「深月」



そう優しく呼んだ私は、深月の拳にそっと手を添える。