「とある売人については、俺もまだあんまり情報を掴めてないんだけど、たった一つはっきりとわかってるのは、とある売人は黒龍を恨んでるってことだ」
それくらいかな、と言うように、忍者は息を吐いた。
忍者さえも、あまり情報を掴んでいない“とある売人”、か……。
誰に、何に対しての恐怖なのかはわからないが、指先まで震えていた。
「んじゃ、俺は帰りま~す」
忍者は陽気にそう言うと、その場から消えた。
いや、正しくは、目にも止まらぬ速さで移動した。
「逃がすか……!」
階段を上っていた忍者の姿を捉えた深月は、地を蹴って走り出す。
深月に続き、司と律、そして私も、忍者を追いかけた。
階段を駆け上る。
いつも廃ビルの前に立っている見張り役が、今日はなぜかいなかった。
見張り役がいなかったから、忍者は簡単に地下に侵入できたんだ。



